アート

抽象木版画:「丹・端」ー1、「丹・端」ー2、「丹・端」ー3、制作過程

 

・・・2023年6月に開催される「伍人展」に向けて、大作品2点,中作品2点、小作品3点の展示作品制作中です。

小作品3点の題目は、「丹・端」としました。1~3までの3点シリーズです。

そのデザイン・ヒント・彫り・摺りと裏技など加えて紹介します。参考になれば幸いです。

抽象木版画:「丹・端」-1~3

・・・伍人展の展示会小作品、抽象木版「丹・端」シリーズと題し、新たなシリーズを制作トライ中の記事です。

完成作品

左から「丹・端」-1「丹・端」-2「丹・端」-3の作品。

作品の題目、「丹・端」の意味

「丹」

  • 赤土、硫黄と水銀との化合したもの、辰砂(ししゃ)=丹砂。
  • オレンジ色の日本画顔料、古くから鉛に硫黄と硝石とを加えて焼いて製した。科学的には四酸化三鉛。鉛丹。黄丹。

「端」

  • 物の末の部分。先端。②中心から遠い、外に近い所。ヘリ。ふち。
  • ③切り離した部分。切れ端。多くの中の一部分
  • ⑤あとが続く最初の部分。きっかけ。いとぐち。端緒。

「丹・端」の意味

「作品を作り出すさまざまの形をした個々のパーツは、丹(赤土色)と呼ばれる顔料を含むパーツで構成される」との意味です。

「丹・端」ー1、制作過程

完成作品

デザイン

当初の案-1

ヒント

色と形:築地塀柄を主体とする構成

築地塀柄を主体とするためには、上下に焦点が分散される。築地塀の中は色付けし、中心的存在感を強調する。

改善点:安定感を持たせる

作品の焦点が分散されず、作品に安定感を持たすため、バックの下半分は、すべてのバックを黒にする。

トレース

当初の案-1に、下部を鉛筆で黒に塗り潰しトレースしました。

彫り

1.丹(赤)の部分

<築地塀柄の後方の丹(赤)を彫る>

2.背景の黒とグレイ部分

<背景のグレイ>

3.築地塀柄の部分

べニア板の固定にマット紙を使用するため、トレース紙を活用し築地塀柄部分の位置をくり抜く

1.築地塀柄専用のべニア板を作成する。
べニア板の裏と表に、瓦と瓦の外郭を彫ります。

2.マット紙をくり抜く

マット紙を使用し、築地塀柄部分の位置をくり抜きます(トレース紙を活用し来る抜く位置を定める)。

摺り

1.丹(赤)を摺る(=築地塀の背景)

 

2.背景のグレイ

 

3.築地塀を摺る

1.<築地塀柄、マチエールの部分を摺る>

 

2.<築地塀、瓦の部分を摺る>

 

3.<築地塀、瓦の輪郭を摺る>

 

3.背景の下部黒を摺る

 

裏技(築地塀柄)

・・・今回、シリーズ作品とするため、築地塀柄は汎用性をもたせることにしました。

1.築地塀柄の部分を彫る

築地塀柄のみ専用のべニア板を彫ります。築地塀柄の部分だけをべニア板をカットし、裏表を彫る。

更に汎用性を持たせるため、二つの違う形に分割しました。

2.マット紙をくり抜く

マットは、当初デザインされた築地塀の該当部分を切り抜き、築地塀柄専用のベニヤ板をはめ込み摺ります。

3.築地塀柄べニア板とマット紙

築地塀柄べニア板とくり抜いたマット紙は、ピッタリフィットさせ、摺りの時ずれないよう、補充・調整します。

写真:(右側)築地塀柄の下部とマットの隙間を補充しました。

4.摺る時の状態

摺りの段階では、マット紙をくり抜いた部分に築地塀柄べニア板をはめ込み摺ります。

完成作品へ

・・・作品の外側が白紙の場合、エンボス加工を施してから完成です。

写真:作品を裏返し、エンボス加工を施します。

1.裏面からエンボス加工を施す

作品の縁が白い場合、必ず作品の裏からバレンなどを使いエンボス加工を施し、作品の縁をはっきりさせる

このようなエンボス加工は、マット切などの額装・作品の鑑賞に役立つので省略しないよう施します。

2.完成作品

「丹・端」ー2、制作過程

完成作品

デザイン

当初の案-1

改善後の案-2

写真:(左)当初の案-1,(右)改善後の案-2。

 

ヒント

色と型:黒を主体の構成とする

「丹・端」-2は、黒を強調する。黒に対しのバックの丹(赤)の面積が広く、丹(赤)が強く感じる。

改善点:下記2点

  • 丹(赤)の幅を黒より狭くし、黒の方を強調する。
  • 丹(赤)の幅を狭くした部分に同じ幅の細いグレーを短く入れる。

 

トレース

・・・改善後の図柄をトレースする。特に築地塀柄の位置は、慎重にはっきりと表示することが大切です。

写真:(左)築地塀柄の位置、(右)改善後のデザイン。

 

彫り

1.通常の彫り

写真:黒の部分。

 

写真:丹(赤)の部分。

 

2.築地塀柄の彫り

築地塀柄の位置に合わせマットを切り抜き、築地塀柄のべニア板をはめ込みます。

写真:マットにはめ込んだ築地塀柄のべニア板。

 

裏技(築地塀柄)

・・・今回、築地塀柄は汎用性をもたせるため、その部分だけを専用のベニヤ板(=築地塀柄のみ)を彫ります。

当初デザインされた築地塀の部分に該当するマットの部分を切り抜き築地塀柄専用のベニヤ板をはめ込み摺ります。

1.築地塀柄を彫る

当初デザインの位置に合わせ、正確にマット紙を切り抜く。

築地塀柄の部分だけをべニア板をカットし、裏表を彫る。

2.マット紙をくり抜く

築地塀柄べニア板とくり抜いたマット紙は、ピッタリフィットさせ、摺りの時ずれないように注意します。

写真:築地塀柄のべニアをはめ込んだマット。

 

摺り

1・グレー部分から摺る

2.丹(赤)部分を摺る

3.築築地塀柄(瓦)部分を摺る

4.築築地塀柄(瓦の縁取り)部分を摺る

5.黒の部分を摺る

完成作品へ

1.裏面からエンボス加工を施す

作品の縁が白い場合、必ず作品の裏からバレンなどを使いエンボス加工を施し、作品の縁をはっきりさせる

このようなエンボス加工は、マット切などの額装・作品の鑑賞に役立つので省略しないよう施します。

写真:作品の裏からバレンでエンボス加工を施します。

 

2.完成作品

「丹・端」ー3、制作過程

完成作品

・・・下記の様にデザインを検討し、掲載します。

デザイン

当初の案-1

再検討の案-2

再々検討の案-3

ヒント

色と型:丹(赤)を主体

「丹・端」の作品は、丹(赤)の存在を主体とする。とうしょ案では築地塀の存在が丹(赤)より大きく感じる。

改善点:案1~3の対応

改善点:案-1

築地塀柄を水平に半分にする。半分にした下部の面積を築地塀以外のデザインに置き換える。

改善点:案-2

築地塀柄を狭くした部分に背景のグレーを入れ、検討してみました。

又、同時にコピー機のミラー効果を使用して、左右を逆にしたデザインも検討してました。

改善点:案-3

下部の築地塀柄の形と、上部の黒・丹(赤)の形が分断感があり、マッチしない。

分断感を解消するため、作品左端の三角と対象に築地塀柄右端に三角の切れ込みを入れる。

3月30日現在、デザインが決まりました。今後、彫り以後の過程を掲載いたします。

彫り

1.丹(赤)と下部(グレイ)

2.背景(黒)部分

3.築地塀柄部分

1.<マットをくり抜く>

築地塀柄部分に位置するマットをくり抜く。

2.<マチエール版木を、ストッパーを利用し作る>

築地塀柄と同じサイズにストッパーを作り、同サイズのマットに貼り合わせる。

摺り

1.「丹・端」と下部グレイ

2.築地柄マチエール

3.築地塀柄、瓦部分

4.築地塀柄、瓦外郭

5.黒の背景部分

裏技(築地塀柄)

1.築地塀柄の版木

  • 築地塀柄のマチエール用の版木を作る。ストッパーをマット紙に貼り付ける。
  • マットをくり抜き、築地塀柄の版木を埋め込む。
  • 築地塀柄版のマチエール・瓦・瓦の外郭の順に摺る。

 

完成作品へ

1.裏面からエンボス加工を施す

作品の縁が白い場合、必ず作品の裏からバレンなどを使いエンボス加工を施し、作品の縁をはっきりさせる

このようなエンボス加工は、マット切などの額装・作品の鑑賞に役立つので省略しないよう施します。

2.完成作品

 

抽象木版画:「丹・端」ー1~3のまとめ

・・・2023年6月に開催される「伍人展」に向けて、の展示作品の一部である小作品3点における制作中の過程に関する記事です。

従来、「刻」と題したシリーズでした。今回の小作品3点は、「丹・端」と題し、新たなトライとなりました。

「丹・端」-1は、黒の上下と奥行。「丹・端」-2は、面積のによる強弱。「丹・端」-3は、形のバランス処理を経験しました。

「新たな創造に進歩がある」と思っています。新しい創造の繰り返しは困難を伴いますが、

それ以上に新たな発見の喜びと進歩があると信じています。最後までご覧いただき有り難うございました。