アート

木版画と四季:春の木版画、行事・植物・動物、その他

 

・・・現在、日本料理店さんとご縁があり、木版画作品を店内に飾らせていただいております。

日本料理と季節は関係が深く店内に飾る木版画も季節ごとに作成しながら交換しています。

木版画と四季

・・・店内に飾る木版画も季節ごとに交換しながら、何とか2年を過ぎました。

その中で感じたことは、日本の四季と花鳥風月、これは作品の主題の基本であると再認識しています。

季節ごとに主題を見つけ制作するのは、簡単ではありませんが、先ずは春の木版画からスタート、追加しながら充実する予定です。

同じように季節にマッチした作品を制作される方に、記事の中で何か参考になれば幸いです。

春の木版画

行事:ひな祭り

写真:ひな祭り完成作品。

デザイン、ヒント

立びなとしてデザインする。お内裏様とお雛様を寄せ合わせ、 お内裏様の前にお雛様を立たせます。

バックに金屏風を意識し、金箔をはった屏風を表現したく新しい試みにトライします。

制作工程

1.作品の背景造り

裏技1.ベースと金箔の2版で表現する。金箔を表現するため、ベースになる版にジェッソを塗ります。

写真:金屏風のベースとなる版、ジェッソを塗った状態。

 

裏技2.ベースとなる版に、お内裏様とお雛様の姿をカバーし、背景になるベースのみを摺ります。

和紙でお内裏様とお雛様の反転した姿と桃の花の場所を切り抜き、色付けしないようにカバーします。

写真:背景となる屏風のベース、お内裏様とお雛様そして桃の花の部分は白くなっています。

裏技3.金箔はベースと同じサイズの版に、正方形の発泡スチロール一個づつ貼り合わせ、版を埋めます。

発砲スチロールの大きさは作品とのバランスを考え決める。ノリはヤマト糊がおすすめです。

今回の作トライで、金箔を表現するのに試行錯誤しましたが、発砲スチロールが最適でした。

写真:発泡スチロールで金箔を表現する。

裏技4.裏技2.と同様、お雛様の姿をカバーし、背景となるベースのみを摺ります。

摺る前に、顔に当たる部分と白くしたい梅の部分を、ペーパータオルなどで拭き取ります。

写真:金屏風前にお雛様を摺ります。
2.お雛様とお内裏様を摺る
写真:金屏風前に、お内裏様とお雛様を摺ります。

裏技1.同じ版で塗り分ける塗り分け方で摺ります。塗り分けの細かい部分は細い筆で色付けします。

大きく色分けする時は、和紙の切れ端などをハサミでカットし、色分けのカバーに使用します。

3.台座を摺る
写真:台座を刷り、作品に安定感が出ます。

 

4.落款を押す場所を定める

写真:落下を押す場所を左やや上部に定めました。

裏技1.落款を押す場所を濡れた筆でなぞり、素早く紙タオルでその場所の水分を吸い取ります。

ひな祭り

ひな祭りの歴史は古く、その起源は平安時代中期(約1000年前)にまでさかのぼります。

3月3日の上巳(じょうし・じょうみ)の節句に、女児のある家で幸福・成長を祈って雛段を設けて雛人形を飾り、

調度品を具え、菱餅・白酒・桃の花などを供える行事。季語は春。

 

植物(1):竹の子

写真:竹の子、完成作品。

 

デザイン、ヒント

竹の子一個ではなく2個でバランスをとる。大小前後にならべ、奥行きを見見せる。

両方とも竹の子はわずかに湾曲させ、先端を内側に向けることにより絵画としてバランスをとる。

制作工程

1.作品の背景造り
写真:ストッパーを利用し、竹の子の部分にジェッソを塗った状態の版。

裏技1.竹藪の中に芽を出すイメージを表現するため、バックになる版に*ストッパーを使いました。

*ストッパー(滑り止め)は、100均・DIYショップで手に入ります。

沢山の種類の中から、版木として使えるか試し刷りをしながら最適なものを選びます。

裏技2.大小2個の竹の子の部分にジェッソを塗り、色付けを抑え、竹の子の表現場所を確保しました。

 

写真:背景になる版を摺った状態。

 

2.作品の上下の処理

裏技1.上部は明るい黄色系統、下部は茶色で土を連想させます。

竹の子本体の彫り

写真:竹の子輪郭と皮の彫り。

 

裏技1.大小の竹の子を縁取し、竹の子の皮の筋を表現するため、皮一枚ごとに筋を入れて彫る。

 

写真:竹の子の皮は、一枚ごとに生育に従い彫る。

 

裏技2.竹の皮は、一枚ごとに観察し生育状態に適した筋を入れて彫りました。

作品の上下にぼかしを入れます

写真:版の上部は気系統、下部は茶系統のぼかしを入れます。

 

裏技1.バレンはなるたけ裏のごつごつが少ないバレン(初心者用)を使います。

裏技2.ぼかしはバレンを版の上下のエッジを使って摺るとスムーズにぼかせます。

 

写真:版の下のエッジを使う様子、バレンの上部は浮いています。

 

4.落款を押す場所を定める

写真:落下を押す場所を右下部に定めました。

裏技1.落款を押す場所を濡れた筆でなぞり、素早く紙タオルでその場所の水分を吸い取ります。

竹の子

竹の地下茎から出る芽。鱗片上の皮で包まれている。煮て食用にします。

竹の子の季語は「夏」だそうです、確かに多くの俳句や歌に詠まれる人気者ですが、

このブログでは実際の自然の生態に従い、春の作品として載せました、宜しく。

植物(2):チューリップ

 

・・・市販の封筒やハガキなど素晴らしいデザインに出合ったとき「木版で表現できないか」「木版だと面白いかも」と、考えます。

今回、株式会社デザインフィル ミドリカンパニー発行のハガキ「チューリップ」をモチーフにチャレンジしました。

原画とデザイン

写真:(左)デザイン、(右)ハガキの原画。

ヒント

塗り分け法を使用し、出来るだけ版数を減らしたい(できれば3~4版まで)。

それには、花の輪郭と葉の輪郭を凸版で処理せず、白抜きで対応する。

但し白い花びら2個は、存在を表現するためそれぞれの輪郭を彫る。

彫り(1)

花と葉の部分

彫りの版木を減らすことで、必然的にデフォルメ・省略に伴う木版の面白さが引き出されます。

写真:(左)デザイン、(右)花2個の輪郭と他の花の2個分の下部。

 

彫り(2)

花びらの部分

裏技:今回は、複数の版を使用せず、上げ刷りによる色彩の強弱で物体を表現します。

写真:(左)デザイン、(右)花3個分の彫り。

 

摺り

(1)葉と花びら

葉っぱと茎、2個の花びらの輪郭と他の花びら2個の下部。茎の色はマリンブルーと緑系統の色の中で仕分けます。

写真:赤い花びら2個の下部は薄緑で統一しました。。
(2)花3個

裏技:最上部の花1個と真ん中の花2個を摺ります。花の中心に向け2~3回重ねて摺る(=上げ摺り)事により質感を出します。

木版らしさを演出するため、赤い花の左横に赤い「ケツ」を摺ります。

写真:赤い花びらは、中心部分に向け2~3回重ねて摺る(=上げ摺り)。

 

(3)左下部へ市松模様

作品のバランスをとるため左下部に市松模様を摺ります。

裏技:更に最上部の花及び白い花にステンシル技法で緑の色付けをし、エンボス加工を施します。

完成作品

作品の縁の白い作品は、最終的にエンボス加工を施し完成です。

写真:(左上)ステンシル技法で緑の色付け、(中)花びらの横にケツ、(左下)市松模様。

 

植物(3):菖蒲

 

植物(4)さくら・動物(1)鯛:さくらと鯛

写真:さくらと鯛、完成品。

 

デザイン、ヒント

さくらの花と鯛をコラボする。上段にさくらの花、下段に鯛を配置しました。

さくらの花びらを鯛の間に入れて作品として上下のつながり(植物と動物をつなぐ役割)一体感を見せる。

制作工程

1.デザイン
写真:デザイン構想段階。

 

2.さくらの彫りと鯛の彫り
写真:さくらの花と鯛の縁取り。
3.さくらの背景の彫りと鯛の彫り
写真:さくらの花の背景と鯛の本体。
4.花びら背景の彫り
写真:さくらと鯛をつなぐ背景を彫る。

 

さくら鯛

さくらの咲く頃、産卵のために内湾の浅い所に群衆して漁獲される鯛。瀬戸内海のものが有名、美味。

ハタ科の海産の硬骨魚、全長約20センチメートル。季語はもちろん春です(笑)。

鯛型で、背びれの第3棘と第3軟条および尾びれ上下両端の軟条が著しく長い。

すこぶる鮮麗な紅色で、本州中部以南産。本作品では色は「さくら」を意識してピンクにしてあります。

植物(5)

はる-3

動物(2):メバル(春告魚)

 

 

動物(3):アマゴ

 

木版画と四季:春の木版画のまとめ

・・・日本料理店さんとご縁があり、木版画作品を店内に飾らせていただいております。

その中で感じたことは、日本の四季と花鳥風月は、切っても切れない強いつながりがあります。

一方、季節ごとに主題を見つけ制作することは、簡単な作業ではではありませんが、

これも良い勉強の機会だと考えています。このブログが、版画愛好家の方に参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。