アート

画像でわかる木版画の作品作り。工程・裏技・ヒント。植物編(花・木・野菜)。

 

・・・山本鼎・斎藤清・棟方志功など版画作品の魅力に取りつかれ50年、昨年夏に後期高齢者の仲間入りをしました。

カルチャーセンター通いを55才から始め、20年を経過しました。現在は公募展10年連続出展中です。

その間に体験した木版画の作品で身近な題材に絞り、工程・裏技・ヒントを画像で解説します。

版画ファンの方にお役に立つ情報があれば幸いです。身近な題材の花・木・野菜から取り上げたいと思います。

画像でわかる木版画、植物編(花)

花(1)、「琉球朝顔」

・・・数年前に夏の飛騨高山の街並みを散策している時、深い緑の葉と青い朝顔の花に統一された軒下が続く一画に出会いました。

その軒並みに出会ったとき、軒下の統一感の美しさと緑の葉っぱと青の朝顔の彩のコラボに思わず引き込まれました。

深い緑の葉っぱの中に、小ぶりながら凛として自己主張をしている小ぶりの青いアサガオの軍団に愛らしさとパワーを感じました。

葉っぱが芋の葉に似ており、小ぶりの青い花から琉球朝顔とわかり、作品にしましたので解説します。

完成作品「琉球朝顔」

 

写真:小ぶりながら凛とした琉球朝顔に出会いました。

工程1.素材を集めます。

ヒント:素材

木版画では、実物をよく観察する以外に、写真・植物図鑑など参考にします。

省略するところ、強調するところなど、特徴をつかむことが肝心です。

工程2.作品のデザインをイメージします

ヒント:自己流

工程1で、良いデザインだったらその部分だけ参考にして消化したうえで、「自分流」にデザインします。

写真:今回は右側を解説します。左側は暑中見舞いに使用しました。

工程3.版木にトレースします

ヒント1省略も面白い

トレース中に彫りが無理だなと思う部分は、省略します

木版画作品は、省略したほうが面白いケースが多々あります。

ヒント2版木に墨を引く

葉っぱやツルなど複雑に交差する作品は、版木にあらかじめ薄く墨を引くと、トレース線が分かり彫りやすい。

工程4.彫る(使用版木はシナベニヤ6mm)

ヒント:細かい彫り

裏技、細かい部分を表現したい作品は、あらかじめボンドまたは水性ニスを多めの水で薄めて塗るとベニヤのはがれ防止になります。

写真:背景は、ごく薄く同系統の色で整えました色がついて欲しくない部分(花の中心部分)はテープでカバーしました。

 

工程5.和紙をカット摺りの準備をします

ヒント1:白い和紙を使用するか鳥の子色を使用するかは、作家の好みです。

基本、白黒作品は鳥の子色を使います。カラー作品は白色の和紙を使用します。今回は白い和紙を使用しています。

工程6.背景の摺りは、ゴマすりで表現しました

ヒント1裏技、版木(ベニヤ6mm)に全体にジェッソを塗ります。ジェッソを水で溶き塗りやすくします。

効果:ごま刷りがだまになるのを防ぎ、小さな粒で表現できます。

ヒント2:裏技薄く摺る時は,最初からバレンを和紙に強く押し付けてはいけません。バレン跡が残らないよう、優しく軽く均等に摺ります。

高価なバレンでなく、バレン跡が残らない文房具屋で売ってるような安価なバレンが向いています。

写真:朝顔の花が目立つように、背景色はホライズンブルーで薄く摺ります。

工程7(1).朝顔の花を摺ります

ヒント1絵具の状況

最初は水分を多くして溶きます。絵具は薄く摺ります。徐々に上げ摺りを重ねて濃い部分を表現します。

ヒント2:明るく表現

裏技、最終的に明るく表現したい部分には、予め版木にジェッソを塗ります。

ジェッソを塗った部分は水分をはじくので絵具は薄くなり、結果的に周囲より明るく表現できます。

写真:工程7(1)、最初は薄く摺り始めます

 

工程7(2).朝顔の花を摺る、工程(1)より濃くします

ヒント1:綿棒の使用

裏技、より明るく表現したい部分には、綿棒を使い余分な絵具を除きます。周囲より明るく表現できます。

ヒント2上げ刷り

徐々に上げ摺りを重ねて濃い部分を表現します。より濃く表現したい部分は、集中的に上げ刷りをします。

写真:工程7(2)、上げ摺りを繰り返しながら濃くします。

 

工程8.葉っぱを摺ります

ヒント1葉っぱ

当作品は、色分け方で摺ります。朝顔の部分も同一の版木に彫り、色分け方で葉っぱの部分を摺ります。

ヒント2色分け方=同じ版木の上で色を分けて、その都度摺ります。

  • 利点:版木がずれないので、きれいに色分けできる。
  • 欠点:色分けの手間がかかる・色重ねはできない。
写真:色分け方で、葉っぱの部分を摺ります。

 

工程9.アクセントを追加し、摺る

ヒント1:作品右下方の処理

作品の全体的バランスを勘案して、右下方に邪魔にならないアクセントが欲しい。

ヒント2:市松模様を利用する

裏技、ストッパー(滑り止め)の柄を利用する。水彩絵の具の付き具合市松模様の柄がマッチしていました。

版木と同じサイズのマットを作り、デザイン通りにカットし、ノリで貼り付けます。

写真:このアクセントで、作品全体のバランスをとります。垣根を連想いただければ幸いです(笑)。

 

花(1)、「琉球朝顔」のまとめ

・・・今回チャレンジした琉球朝顔は、試行錯誤を重ねた末に仕上がりました。

<試行錯誤>

  • 琉球朝顔の花の数:どの花を大きく咲かせ、何処につぼみを入れるか(カットした紙を散らせバランスを探りました)。
  • 葉っぱの多さ:「やや小さめの葉が多いのが特徴」ですが、花を目立たせるため極力省略しました。
  • 花の厚み感の表現:ひたすら上げ刷りを繰り返しました。
  • 背景の調節:花を引き立てるには薄い色調しか会わないとの結論に至りました。又同系色しか、しっくりきませんでした。
  • アクセントをつける:同系色の作品に反対色のアクセントをつけることを試みました。(基本は、反対色を濁らせます)。

従来の朝顔作品の中でも、結果は満足できる作品となりました。何かあなたの参考になれば幸いです。

植物編(花)琉球朝顔を最後までご覧いただき有り難うございました。

花(2)、「玉之浦」(幻の椿)

・・・赤い花びらを白く縁取った五島が世界に誇る幻の椿「玉之浦」その花姿は艶やかで、とても印象に残ります。

偶然の発見

昭和22年、炭焼を生業としていた故有川作五郎さんが、山(父が岳=福江島の玉之浦町・461m)の中腹に自生した原木を偶然発見しました。

その後、幻の椿として一躍愛好家の注目を浴びました。

しかし相次ぐ乱獲により母木は枯渇しましたが、その子孫世界中に広がりました。

 

写真:作品の参考にした「玉之浦」の写真。

 

玉之浦の名付け親、故藤田友一氏

五島市になる前、旧町名で「玉之浦」がありました。その玉之浦町長であった故藤田友一氏が玉の浦を世に広めた人です。

彼は町民からの信頼も厚く、24年の長きにわたり町長を務めあげました。

余生の楽しみの山歩きで、凛と咲く椿に心を惹かれていったのでした。

そんな折、昭和48年(1973年)長崎市で全国椿展が開かれることとなり、藤田さんにも出展の依頼がありました。

藤田さんは満を持して自身の育てた逸品の椿を「玉之浦」と名付け、出展したのです。

「玉之浦」は紹介されるや否や、瞬く間にツバキ愛好家の知るところとなりました。作り出すことのできない、夢のような美しさの花だったからです。

写真:玉之浦大橋から、玉之浦の風景。

 

「玉之浦」にとっての災い

しかし、その夢のような美しさゆえの人気ぶりは「玉之浦」にとって災いをもたらすものでした。

沢山の人が枝を折ったり根を切ったりした結果、五島の山にひっそりと立っていた母木は枯れて死んでしまいました。

今はその子孫がいろんな咲き方で、世界中の人々の目を楽しませています。名前に”玉”や”タマ”とついているのが子孫です。

 

 

完成作品「玉之浦」

写真:木版画作品「玉之浦」。

 

工程1.素材を集めます

ヒント1.素材

木版画では、実物をよく観察する以外に写真・植物図鑑など参考にします。

ヒント2花木の題名

花木の場合、題名を間違えないように注意しましょう。思わぬ知識もゲットできる時もあるのでネット検索もオススメです。

今回は「幻の椿」と言われる所以、母木が現存しないので対象物がないこともあり、資料検索に力を注ぎました。

作品のデザインをイメージします

ヒント1.バランス

版木の大きさと花木のバランスを調整します。版木を変えない場合、コピー機で画面の縮小・拡大しながら調節しています。

ヒント2.花木のデザイン

花木を題材にする場合、枝の部分は画面の四つ角を避けましょう(角からずらします)

写真:花木と版木のバランスを調節します。

 

工程3.版木にトレースします

ヒント:色分け路レース

花か葉っぱ、どちらかを色分けすると彫りのが容易になりますので、習慣としてお勧めです。

 

写真:「玉の浦」花の部分に色付けしています。

 

工程4.彫る(使用版木はシナベニヤ6mm)

ヒント塗分け方の利点

木に枝、葉っぱと花は、基本的に塗り分け方で処理すると、摺る段階でずれがなく効率的です。

一方、版を分けて摺る方法もあります。重ねて摺りたい部分があるか、ずれを意識的に表現したいときはありです。

工程5.和紙をカット、摺りの準備をします

ヒント1和紙の種類

「白」か「鳥の子」か:白い和紙を使用するか鳥の子色を使用するかは、作品に相応作家の好みです。

個人的基本白黒作品は「鳥の子」色を使います。カラー作品は「白」色の和紙が効果的です。今回は白い和紙を使用しています。

ヒント2和紙の効率的カット

白枠を含めた大きさの紙(新聞紙・コピー紙など)を数枚用意して和紙に並べると効率的に作業できます。

ヒント3端切れの和紙

端切れの和紙も後日のため試刷り、蔵書票などに利用可能なスペースは、捨てずに保管しましょう。

写真:作品の大きさと和紙の広さでカットを決めます。

 

工程6.背景の刷りは、粒々すりで表現しました

ヒント1.マチエール

背景のマチエールづくりは、ストッパーをカットしてマット紙に糊付けして使用しています。

ヒント2.ストッパーの糊付け

ストッパーを糊付けした後の厚さは、版木の厚さと同じにします。

裏技:ストッパーは、摺りの時やや伸びる傾向があるので試し摺りを行ってください。

 

写真:裏技、ストッパーのカット方法は、花木の輪郭より広めにカットします。

 

工程7.花の摺

写真:花の部分の摺。真ん中はつぼみの部分。

 

工程8.葉っぱの摺

ヒント1.葉っぱの色

葉っぱが多い作品は、緑系の中で各々が識別できるよう色を塗り分けることが重要です。

ヒント2.葉っぱの厚みの表現

一回摺った後、さらに白の透明水彩で重ね摺を摺ると、明暗を付ける効果があり、葉っぱの厚みを表現できます。

裏技1.花の外郭

先端のメインの花の外郭は、葉っぱと同じ版木で塗り分け方で処理します。

裏技2.花の細い外郭は

版木を極力薄く彫るため、その周りをジェッソをしみこませて固めてから彫り進みます。

 

写真:木の枝と葉っぱは、塗り分け方です。花の先端はジェッソで固めてから彫り進めます。

工程9.全体のバランス

<当初例>背景が軽い感じがします。全体的に重厚さが欲しいと思いました。

写真:「玉之浦」全体に浮いた軽い感じがします

 

<最終例>背景の粒刷りを密に濃くし、落ち着いた感じにしました。その後、水張りしました。

写真:「玉之浦」水張り状態です。

 

2010年3月22日、五島鬼岳の椿園「樹木園」が、国際ツバキ協会認定の「国際優秀椿園」に認定されました。

花(2)、「玉之浦」のまとめ

・・・今回チャレンジした玉之浦の新作は、試行錯誤を重ねた末に仕上がりました。

<試行錯誤>

  • 玉之浦の花の数:2個咲かせ、つぼみを入れないと作品としてまとまらない(1個咲かせて2回失敗しました)。
  • 葉っぱの多さ:「やや小さめの葉が多いのが特徴」との考えで、葉の一枚一枚ごとの接面が同一の色にならないように色調に差をつけます。
  • 葉っぱ厚み感の表現:白の透明水彩を重ねる方法を見出しました。
  • 背景の調節:薄い段階から徐々に濃い段階へ、日にちを使い徐々に調節しました。

現物がなく資料を集めての作品作りとして勉強になり、結果は満足できる自信作となりました。

何かあなたの参考になれば幸いです。「玉之浦」をご覧いただき有り難うございました。

 

花(3)、「寒椿」(赤と白

・・・赤い椿と白い椿のコラボのハガキをネットで見た時、木版画で表現してみたい、という衝動に駆られました。

駆け出しの画家が著名な画家の技術・精神を習得するため美術館で模写をするような感覚でしょうか。

イラストの発見

トレース

既にイラストは出来上がっていますので、木版画に向くように工夫しながらトレースします。

制作工程

<背景>

今回の挑戦:背景がぼかしてありますので、新たな挑戦は背景をぼかす方法にしました。

<水性ニス>

背景となる版木部分には、水性ニスを塗ります。背景を柔らかいタッチに表現するためです。

彫り

<葉っぱ>
  • 輪郭:背景を除いて、先ず葉っぱごとに輪郭を彫ります。
  • 明暗:光が当たる明るい箇所には、ジェッソを塗ります。

 

<花びら>
  • 紅い花びら:赤い花びらは周囲を彫りさらい、凸状態にします。
  • 白い花びら:白い花ビラの輪郭を残して彫ります。

摺・色付け

<花びら:赤>
<花びら:白>
<葉っぱ①・つぼみ>

色付け:葉っぱを色付けます。先ずは全体に薄く溶いた絵の具で付けます。

つぼみ:黄色(オーレオリン)で色付けます。

<葉っぱ②・つぼみ>

色付け:更に濃く表現したいところを色付けます。薄く溶いた絵の具で重ねて濃く付けます。

 

<背景①>

背景の柔らかい表現

版木:版木(水性ニスが塗ってあります)を彫らずに、版木の上に刷毛・筆で書き込みます。

絵具:比較的薄く溶いた絵具を版木にたたくようにして付けます。重ねて摺り濃淡を表現します。

 

<背景②>

花びら(赤):濃淡を色を刷り重ねながら摺り重ねながら調節します。

花びら(白):グレイオブグレイで摺り重ねながら調節します。

背 景:更に書き込みます比較的薄く溶いた絵具を版木にたたくようにして付けます。

 

完成作品

つぼみ:つぼみの中に茶色の影を筆先で付けます。

落 款:バランス上、右下に落款を押して完成です。

花(3)、寒椿(赤と白)のまとめ

・・・赤い椿と白い椿のコラボを見た時、「木版画で表現してみたい」という衝動に駆られ挑戦しました。

今回は背景の柔らかい現方法として、版木を彫らずに着色する方法に挑戦しました。

木版画作品にして木版画の持つ温か味は独特であるということを再認識しました。

これからも良いなと思った写真・絵など、木版画にしたらどいう感じになるのだろう。

また新たな世界が広がる予感がしてきました。最後まで読んでいただきありがとうございました。

画像でわかる木版画、植物編(木)

木(1)、笠寺一里塚の大榎

・・・ご存じでしょうが、笠寺観音の近く旧東海道の一里塚に今も凛とした大榎がそびえています。

30代の時、仕事の関係で2年ほど南区笠寺の店舗に転勤になりました。

笠寺観音をお参りした際、近所を散策した時「笠寺一里塚の大榎」を発見しました。

写真:笠寺一里塚の大榎(高さ10m幹回り3.75m)、1604年徳川家康の命により造られたとされます。

一里塚の大榎を取り上げた経緯

・・・一里塚の木として植えられ400年以上の間、風雨に耐え生き残った雄姿に圧倒され感銘を受けました(1959年、伊勢湾台風にも耐え生き残りました)。

写真:交換会の最初の作品「冬木」。

カルチャーセンターに入った後、最初の交換会の作品「冬木」は一里塚の大榎を題材にしたほどです。

それから約20年後、作品「冬木立」として再チャレンジしました。

完成作品「冬木立」。

写真:「冬木立」、冬の季節に葉っぱを落とした後の幹と枝ぶりの雄姿です。

 

工程1.背景をゴマすりで表現しました。

ヒント1裏技、版木(ベニヤ6mm)に全体にジェッソを塗ります。ジェッソを水で溶き塗りやすくします。

効果として、ごま刷りが、だまになるのを防ぐと同時に小さな粒のごま刷りになります。

ヒント2絵具は薄く溶くが、水分は極力少なくします。水分が多いと最初から作品が台無しになります。

水分が多いかなと思ったら新聞紙・乾いた刷毛などで水分を吸い取ります。

ヒント3:裏技、作品上部と両脇にあたる部分を版木のエッジにバレンを強く押しあて、作品の際を色濃くします。作品として落ち着きます。

<参考>作品の際をより強く出したいときは、再びヒント2を繰り返し、ヒント3を実行します。

写真:画面右側、絵具は薄く溶くが、水分は極力少なくする。

工程2.トレースした後、交差する枝ぶりがあれば版木をを分けます。

ヒント:樹木を題材に取り上げる時、避けて通れないのが複雑に交差する枝ぶりの処理です。

交差する枝の部分に絵具がたまるのを避けるには、版木を分ける処理をすれば解決します。

写真:複雑に枝ぶりが交差する部分を、版木を分けて彫ります。

 

工程3.樹木個々の色彩のトーンの違いを表現します。

ヒント:版木を分けて解決しても、樹木の全体を見て明暗・色彩のトーンの違いを強調したいときはさらに版木を分けます。

 

写真:後方の樹木の明暗・色相を変えたいので、版木を分けて彫ります。

 

工程4.外輪根元など強調しました。

ヒント:さらに外輪・根元など強調したい部分があれば、さらに版木を分けて対応します。

写真:外輪と根元を強調したいので、版木を分けて彫ります。

 

工程5.地面の部分を表現します。

ヒント1:地面の実際の色

作品全体の雰囲気から判断し、実際の地面の色彩と作品にマッチした色彩と相違しても構いません

ヒント2:作品全体とのバランス

どうしても実物を見ているとその思いに強く支配されますが、地面の色彩は作品のバランスを優先させます。

 

写真:月夜を想定しています。盛り上がった土の色は、樹木より暗い色にすると盛り上がった根元が強調されます。

 

工程6.完成品のトーンを調節します。

ヒント1:月夜をイメージしますが。満月を強調したいときは、背景のごま刷り回数を多くし背景色を濃くします。

ヒント2樹木を強調したいときは、樹木のトーンを明るい色調にします。

写真:盛り上がった土の色を暗くすることで、月夜の中にも樹木(やや明るい)の存在感が強調されます。

 

木(1)、「笠寺一里塚の大」」まとめ

・・・江戸時代の1604年設置から四百年もの間、旧東海道を通り人を見守ってきた南区の「笠寺一里塚のエノキ」を治療して後世に残すため、市が寄付金を募るプロジェックトをはじめました。

結果、二百六十七万二千八百四十六円が寄せられ、名古屋市の目標二百万円を超える善意が集まりました(2020年12月末)。

治療は、翌年2月に開始し当月中に終わりました。

笠寺観音(笠覆寺)。

733(天平5)年創建の古刹で尾張四観音の一つに挙がる。本尊は笠をかぶった十一面観世音菩薩です。

雨ざらし状態を見かねた心優しい娘の所作と聞く。お礼の縁結び。通りかかった都の貴族が見初めて迎えたと伝わります。(ローズ、中日新聞)。

植物編(木)を最後までご覧いただき有り難うございました。

*ご参考名古屋市南区散策。笠寺観音(笠覆寺)と玉照姫、笠寺一里塚の大榎、その他。

 

画像でわかる木版画、植物編(野菜)

野菜(1)、ラデッシュ

・・・現在取り組んでいる野菜(ラデッシュ)を解説していきます。まず、画像で完成品をご覧下さい。

写真(2022/3):ラデッシュ 木版(15cm×10cm)。

 

工程1.素材を集めます。

ヒント:木版画では、実物をよく観察する以外に、レストラン・専門誌・イラストなど省略するところ、強調するところなど、特徴をつかむことが肝心です。

写真:素材を集める(実物・レストラン・専門誌など)。

工程2.作品のデザインをイメージします。

ヒント:工程1で、良いデザインだったらその部分だけ参考にして消化したうえで、「自分流」にデザインします。

写真:ラデッシュのトレース、今回は右側を選びました。

 

工程3.版木にトレースします。

ヒント1:トレース中に彫りが無理だなと思う部分は、省略します

木版画作品は、省略したほうが面白いケースが多々あります。

ヒント2:複雑に交差する作品は、版木全体にあらかじめ薄く墨を引くとトレース線が分かり彫りやすい。

今回はそんなに複雑でないので、葉っぱの部分を鉛筆でしるしを付けてあります。

写真:今回は、ラデッシュ2個の長方形を取り上げます。

 

工程4.彫る(使用版木はシナベニヤ6mm)。

ヒント1:裏技、細かい部分を表現したい作品は、あらかじめボンドまたは水性ニスを多めの水で薄めて塗るとベニヤのはがれ防止になります。

ヒント2左側の版木、ラデッシュを受ける側はトレース線の内側を彫る意識を持って彫ってください。

右側の版木、ラデッシュの外側を彫る意識を持ってください。すり合わせた時、ずれが生じにくく修正が可能です。

ヒント3:多少のずれは、作品として面白いケースもあります。修正するかしないか吟味して判断してください。

写真:彫り。ラデッシュの赤い丸と、葉っぱの茎を対比させたい。

 

工程5.和紙をカット摺りの準備をします。

ヒント1:小作品(ハガキ大の作品)は大判の半分から、9枚(ハガキサイス2枚分)取れるので効率が良いです。

ヒント2:白い和紙を使用するか鳥の子色を使用するかは、作家の好みです。

基本、白黒作品は鳥の子色を使います。カラー作品は白色の和紙を使用します。今回は白い和紙を使用しています。

写真(和紙裏側):和紙左側、台座に2か所固定。和紙右側めくり棒に、1か所固定します。

 

工程6.摺りの作業。

ヒント1和紙の右側を台座に固定する。和紙の左側は、めくり棒に固定するとずれが生じません。下記写真参照ください。

ヒント2:作品の版木も台座に枠を作り固定します。台座の枠の高さは版木より低めにします。木とマット2mmで囲っています。

ヒント3:版木のマチエールづくりに、ストッパーをカットして使用しています(但し、下記写真は工程8以降の版木です)。

写真:左側が和紙(左端のめくり棒に1か所固定)、真ん中は和紙が台座に固定2か所、右側が版木と版木を固定した枠です。

 

工程7.作品の途中チェック。

ヒント1:当初の作品イメージと出来上がった作品を比較する。何枚か色を変えながらしっくりいくまで、作品を吟味します。

写真:当初の斜線を入れた作品、色は青主体をイメージしました。

 

ヒント2裏技、色がしっくりこないときは、白黒のコピーで濃淡のバランスをチェックしてみます。

写真:青の背景とラデッシュの赤がしっくりこないが、白黒のバランスは良いと判断しました。

工程8.作品の再検討。

ヒント1作品の色相がしっくりこないときは、裏技で白黒でチェック、OKであれば同程度の明度から色相を変えて検討します(色紙を使うのもオススメです)。

ヒント2作品のデザインで、斜めの線を並行にしてみてはどうかとの思いで、平行にトライしてみます。

写真:背景の斜め線をやめて、平行にしました。

工程9.作品の修正。

ヒント1:背景を平行にすることにより、葉の後ろのマチエールを従来の粒々から横線のマチエールに変えました。

ヒント2:裏技、従来の粒々部分を反転し、横線のマチエールに変えました(ストッパーの裏は細かい横線)。

ヒント3:裏技、横線のマチエールと交わる部分は、ジェッソを塗りました(粒々との接点の絵具をぼかす効果)。

写真:葉の背景はストッパーをカットし、反転して貼り付けた状態です。

工程10.版木の完成から、必要部数の作品を摺ります。

写真:版木3枚の完成状態。左からマチエール・背景・ラデッシュ。

着色:色分け方

同じ版を色を分けて塗ります。同一版上で複数の色を表現できます。(次の写真を参照ください)。

写真:左側、バックはマリンブルーのゴマ摺。右側、同板木にターコイスブルーを葉っぱの部分に塗ります。

工程11.完成作品の水張り。

ヒント1:裏技、小作品(ハガキ2枚分)であれば、水張りの代わりにアイロンで十分代用できます。

ヒント2:アイロンをかける時、作品上下を新聞紙などではさみ、アイロンは低温で丁寧に作業します。

写真:左側は作品、右はスチームアイロン(低温で)。

 

工程12.作品に重しをかけます。

ヒント1:アイロンがけした作品を新聞紙などにはさみ、本などで重しをかけます。

写真:完成作品、新聞紙に挟みます。

 

ヒント2:成作品を新聞紙などにはさみ、本などを用い重しをかけます。一日落ち着かせれば完成です。

写真:版木と重い本の間にはさんで、作品を落ち着かせます。

 

野菜(1)「ラディッシュ」のまとめ

・・・野菜(1)「ラディッシュ」のまとめに、作品の保管方法を加えて説明をします。

作品保管シートの材料(小作品でA4サイズを想定します)。

ヒント1二枚のケント紙ではさみます。ケント紙の下部は白で、上部の枠よりやや厚めにします。

ヒント2上部の枠の色は作品を生かす色調を選びます。保管シートは白を避けます(百均ショップでそろいます)。

写真:左側・台紙の白、右側は作品枠(作品を引き立てる色彩)使います。

 

保管シートの作り方

ヒント1:枠側の中心部に作品を収めるようにくり抜きます。その時中心部を1㎝ほど高い位置に取ると見栄えが良くなります。

ヒント2:裏技、A4サイズの用紙を使いあらかじめ下方から1㎝高い位置を基準にして中心点を定めます。

A4用紙を枠側のケント紙に重ね、くり抜く予定の4隅にキリ・針などを利用し、印をつけると作業がはかどります。

写真:左側A4用紙、サインを含めた作品と枠を加えた長さの1/2を中心点からくり抜きます。右側百均で色付き10枚セットがあります。

 

作品をはさみ完成です

ヒント1台紙側の上部に約5mm幅でノリをつけます。作品を覆う側を下から開く仕様です。

ヒント2:二枚の保管シートで作品をはさみますが、作品の裏側上部の両端に5mmほどノリ付けすれば十分安定します。

作品も下から開き、裏側から色の染み具合・バレンの当て具合を観察できるように仕様します。

作品の裏側を観賞するのは、木版画の持つ人間の手によるバレンの摺り、絵具の量など他の芸術に見られない木版画独特の特徴ある観賞法です。

写真:作品のシート保管方法、完成しました。

額装以外のシートのみの販売、プレゼント、作品交換会などの時にこの保管方法は役に立つと思います。

保管シートは衣装と同じです。心を込めた作品は立派なシートで装い、受け取る方に喜んでいただきましょう。

グレードアップの保管方法で、あなたのファンと伝統ある木版画のファンを増やしましょう。

植物編(野菜)のまとめ及び作品の保管方法をご覧いただき有り難うございました。

画像でわかる木版画(植物編)のまとめ

・・・植物編:花・木・野菜を最後までご覧いただき有り難うございました。

引き続き、花・木・野菜の作品事例を追加していきたいと思います。

木版画を愛するあなたとともに、これからも木版画の面白さ・表現の幅を、広く・深く追求していきたいと思います。

植物編を最後までご覧いただき、ありがとうございました。