・・・親しい方から、木版画の年賀状を受け取り感激した経験はありませんか。
印刷だけの年賀状と比べ、木版画の持つ温か味が伝わってきますね。
そんな時、自分でも木版画の年賀状作りに挑戦してみたいと思った方に参考になれば幸いです。
年賀状の木版画作品
・・・年賀状の木版画に採用される図柄は、干支が一番ポピュラーですね。
木版画年賀状
・・・過去に作成した木版画年賀状をご参考までに掲載します(順不同をお許しください)。
?・子・戌
丑・申・巳
羊・午
寅・卯の年賀状
・・・一昨年(寅)と昨年(卯)の年賀状を記載します。
木版画作品のヒント
・・・木版画作品のヒントとして、今回ブログでも来年の干支は辰ですのでデザインも龍を採用します。
龍は想像上の動物なので、ネットや図鑑・雑誌などを参考に自分なりにデザインします。
参考までに、12年前にデザインした龍の年賀状を掲載します。
年賀状、制作工程
・・・自分なりの龍をデザインします。これからの制作工程が、木版画年賀状作りの参考になれば幸です。
制作工程1、デザイン
・・・雑誌・ネットなど参考に自分なりの龍をデザインしてみました。色と版数のイメージは次の通りです。
色:胴体(黄・赤)と賀(黒)ハガキの白
*龍珠:当初の段階では、黄・金系にましたが、胴体の色と類似しメリハリがなく未定でした。
最終的に、刷りの段階で胴体の色と反対色の青緑系(ターコイスブルー等)がベターと判断しました。
版数:基本は2版
年賀状など数多く作成する版画作品は、版数と摺りの回数を少なくするイメージを持つことも重要です。
つまり、木版画の面白さである省略・デフォルメを、デザインの段階から意識できる利点があります。
ヒント:胴体・龍珠
<胴体:鱗の表現>
- 背側鱗は、シンプルに交差させる、直線で交差する感覚の幅で胴体の太さを表します。
- お腹側は、蛇腹を想像させる横線とその間隔で胴体の太さ表現します。
<龍珠:龍の爪との境の彫り>
- 龍の爪:龍の爪との境を彫ると龍珠の丸さが表現できない欠点が避けられません。
- 龍珠の形:龍珠は丸い形で残し、摺りと色を控えめにしまし丸く彫りました。
- 龍珠の色:龍珠の色を龍の爪の黄糸と反対色の青系で丸く着色しました。
制作工程2,彫り(2版)
1版:頭(角・ひげ)・銅体(背側)
2版:胴体(お腹)・龍珠・舌・賀の文字
<ご参考>
上記1版・2版を(同一版木)色付け後の状態です。
<裏技:版木有効活用>
- ベニヤ板:縦(15cm)×横(22.5cm)にハガキす。2面取れます。
- デザイン:ベニヤ版の両端を有効利用し、真ん中に見当のスペースを取ります。
- カギ見当:ギリギリですが、セメダイン・ボンド・水性ニス等でベニヤの側面を補強します。
制作工程3,摺り
頭(角・髭)
龍珠の摺り
<裏技:指先で摺る>
- 摺り方:龍珠は、人差し指か中指の指先でなぜ回しながら摺ります。
- 力加減:摺り始めは柔らかいタッチで徐々に力を加えて摺ります。
- 注 意:摺り始めから力を入れないように、透き通った龍珠のタッチにムラが出ないよう注意します。
指で摺った例
指先でソフトタッチで摺ると、バレンで摺った時の様にスジが付きません。
バレンで摺った例
バレンで摺ると、ソフトタッチで摺ってもバレン跡のスジが付いてしまいます。
龍珠は、2~3回摺り重ねます
龍珠は柔らかい筆で、薄い色で円を描くように色付けします。
<裏技:色付け>
- 龍珠の色付け:柔らかい筆で龍珠は薄く色付けし、摺り重ねて色をコントロールします。
- 色のバランス:頭・角と龍珠を濃く表現すると、バランスが良くなります。
胴体(お腹)・舌
赤の胴体(お腹)・舌は、絵具を付けすぎないように2回刷りで対応します。
賀(黒)の文字
賀(黒)と龍の舌(赤)の位置が極めて近い場合、賀(黒)の文字は、小筆で丁寧に色付けします。
完成
当初デザインではハガキの右側に赤い帯を入れる予定でしたが、ややうるさく感じるので赤い帯は省きました。
その他
龍の口周りの産毛
・・・龍の口周りの産毛を表したいときの摺り方。
産毛の表現
<裏技:産毛の表現>
- 絵具の状態:表現したい場所の版木に、水を多く含ませ薄く溶いた絵具を付けて摺ります。
- 刷りの直後:紙タオルでハガキの絵具を吸い取ると、にじんだ表現だけが口周りに残ります。
龍珠(りゅうじゅ)
・・・「龍珠」というのは、龍が手に持っているアレです。正式名称は「如意宝珠」といいます。
仏教において霊験を表すとされる宝の珠のことで、
サンスクリット語では「チンターマニ」と呼ばれ、意のままに願いをかなえる珠です(ネット情報)。
タツノオトシゴ展
・・・令和6年は辰年にて「タツノオトシゴ展」が、同年1月に開催予定です。
<ご参考①>成田郷子 木版画展:タツノオトシゴ展、私の水族館、その他
<ご参考②>版画 年賀状はがき展:(辰年)年賀状、その他
寒中見舞い
・・・何らかの都合で年賀ハガキに代わり、翌年の寒中見舞いを作成するケースは下記を参照ください。
<ご参照>寒中お見舞い、木版画作品。雪質・冬空の表現・昼夜の別(ヒント・裏技・制作工程)、その他
年賀状、木版画作品のまとめ
・・・今回の年賀状で龍珠の摺りに関し、薄い絵の具で重ねて指で摺る事で透明感を表現できる発見がありました。
ご自分の親しくされている方が、貴兄からの木版画の年賀状を受け取り感激する姿を想像してみませんか。
印刷だけの年賀状と比べ木版画の年賀状は、木版画の持つ温かみが伝わってきますね。
近年、益々貴重な存在となる木版画の年賀状。これから挑戦してみたいと思った方に参考になれば幸いです。
最後までご覧いただき有り難うございました。