アート

抽象木版画:2025年、作品「層(解離)制作ヒント・工程・裏技・その他

・・・2025年6月11日~15日「版画伍人展」に向け、出展作品「層(解離)」を制作中です。

昨年(2024年)地下鉄で倒れ救急搬送され、即入院(大動脈解離の開胸手術)の経験を基に作成しました。

作品のヒント・工程・裏技など記事にしました。木版画愛好家の方々に参考になれば幸いです。

抽象木版画:2025年、作品「層(解離)」

・・・抽象木版画の作品「層(解離)」は、築地塀模様と大動脈の組み合わせをコラボした作品です。

築地塀模様

築地塀模様は、熱田神宮に現存する「信長塀」をモチーフとした版画作品の原点です。

大動脈

「層(解離)」制作ヒント

・・・前述の伍人展に出展予定の「層(解離)」の制作に至るまでの過程を当初作品→前回作品→今回作品の順に紹介します。

当初の作品

「層(解離」の基になった当初作品。築地塀模様の組み合わせを模索していた作品。真ん中の正方形が浮いた感じです。

真ん中の黒を下方に伸ばすか、赤を右方向に伸ばすか思考していた頃の作品です。

前回の作品

横向きの作品を縦作品にしました。作品下半分の築地塀柄の中央に黒の帯を配置しました。

中央に赤のポイントを配置しました。結果、目線が作品上方(横の黒)から築地塀柄の縦方向を通り、中央赤に戻り止まります。

その後に下方の築地塀柄に従い左右にながれる作品となり、全体としてまとまりが出来ました。

前回の作品(=「層-24」)

今回の作品「=「層(解離)」

作品の中央黒の帯を血管とみなしました。昨年の入院(大動脈解離)で、手術後廃棄処分する解離した大動脈に衝撃を受けました

まるで消防用のホースが水圧で膨らみ限界を超え、はじけたようでした。その組んだ繊維のほつれた網目模様が記憶に残りました。

その1:仮完成

その2:完成

仮完成の「作品その1」を上下180度回転しました。解離した血管が作品上部に位置することで、より際立ちます。

制作工程

デザイン

今回、デザイン→彫りとなります。作品サイズの木枠を作り、その中で版木を組み合わせデザインしました。

 

前回作品「層-24」を基にし、彫りはストックした版木(ベニヤ)を活用、大動脈をコラボする事としました

作品「層(解離)」サイズの木枠を作る

作品のサイズ(56×39cm)を想定し、同サイズの木枠を作り、版木を配置します。

築地塀の上部版木を配置
中央赤の版木を配置
上部黒の版木を配置

解離した大動脈

作品中央の黒の帯を血管とみなしました。ホースの組んだ繊維のほつれた網目模様を作品にしました。

黒の帯を表現する血管は版木の外枠を使い囲む表現だけにし、解離した網目模様の血管はストッパーを使い、作品にしました。

彫り

・・・彫りは、ストックした築地塀柄の版木(ベニヤ)を活用します。大動脈は新たに作成します。

築地塀、保管中の版木を使う

その1、築地塀柄

保管中のベニヤのストック(築地塀柄)の中からサイズを合わせる作業。

その2、最下部の黒部分

不足する最下部の黒帯分は、ベニヤをカットし築地塀に合わせ波型にトレースする(写真。

大動脈(血管)となる部分

  • 市販のストッパー(滑り止め)をマットに貼り付け、赤色のグラデーションを付け血管を表現します。
  • 市販のストッパー(網目模様)をローソク・カッター等使い、中央黒の網が解離している状態を表現しました。

 

摺りの作業

マチエール

その1,マチエール作業する前、最下部の黒及び中央赤部分以外をマスキングしてから実行します。

裏技:マチエールを避ける中央をカバーする
  • 中央(血管)部分:ベニヤ部分を両側からマットで挟み固定する。
  • 中央赤の部分:上記黒のベニヤ部分に赤部分を覆う和紙をテープ(めくれるように)でつなぎます。

その2,前述1,で施したマチエール部分に、築地塀柄の瓦部分を摺ります。

裏技:マチエールの作り方

作品のマチエールについて、いかにして作り出しているかを裏技として解説していきます。

  • 今回は、コルクを使用。回転したり、上下縦横方向にずらすだけでかなり効果的にマチエール作業が進ます
  • コルク以外にもで試すとよいでしょう。ストッパー、壁紙の凸凹の面を利用しても出来ます。

築地塀柄

築地塀瓦部分の外郭を摺ります。

中央赤ポイント・赤い筒

中央の赤のポイントと続く赤い筒(=血管)。赤い筒は円形を表わすようにグラデーションを使います。

赤い筒を覆うように黒の解離した網を摺ります。

?築地塀全体に影を付けます。

仮完成後、再検討

自分では「完成した!」と思っても、必ず第三者に意見・感想を求め参考にしていますが、

今回は偶然、上下を誤って額装しました。結果的に当初発想より、インパクトありと思われ変更しました。

作品「層(解離)」完成

その他

・・・今回「版画伍人展」は、昨年入院(大動脈解離)した経験を基にした作品「層(解離)」で、リハビリ後初の出展作品です。

 

  • 開催期間:2025/6/11~6/15。
  • 開催場所:ギャラリー(J2室)、名古屋市東区東桜1丁目13-2。TEL052-971-5511
  • アクセス:地下鉄東山線・栄。
  • 開催時間: AM10:00~PM6:00(最終日はPM4:00迄)。

 

抽象木版画:作品「層(解離)」のまとめ

・・・今回作品は、昨年(2024年)版画教室へ向かう途中に地下鉄で倒れ、救急搬送され即入院(大動脈解離)の経験を基にしました。

地下鉄職員・救急隊員、医療関係者他大勢の方の迅速な処置のお陰と版画の神様のお陰だと思っております。

入院・手術そして退院後の家族協力の基、リハビリを経て現在、版画作品を制作するまで回復しました(感謝)。

スポーツ・芸術は、パフォーマンスをする側と観る側があって初めて成り立つと再認識させられる今日この頃です。

これからも健康の許す限り、木版画を愛する仲間と共に創作活動を継続できれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました