・・山本鼎・斎藤清・棟方志功など木版画作品の魅力に取りつかれ50年、昨年夏に後期高齢者の仲間入りをしました。
公募団体は、昨年まで国画会にお世話になりました。現在は水彩協会の委員です。
展示活動は、水彩協会展・版画伍人展・火耀会展、画廊の企画展など。今回は過去の作品を再作成することになり記事にしました。
版画ファン・木版画作家の方に、お役に立つことがあれば幸いです。
抽象木版画:作品「JOINT」の作り方
・・・先ず過去の「JOINT」作品を掲載します。従来の築地塀柄一面の画風からの脱却にトライした最初の作品です。
工程1、過去の版木の点検
・・・過去の作品「JOINT」を売却の数年後、再作成の申し出が複数あり、過去の版木を点検しました。
作品「JOINT」シリーズに使用された過去の版木は、関連作品にも多用しており再使用困難と判断しました。
工程2、再作成の決定
・・・作品の再作成は、過去の再現に意識のウェイトが掛かり、新規作成と異なるプレッシャーを感じます。
1.過去作品のトレース
・・・ポイント:下記要領にて過去の作品を再現します。
- 全体の大きさ:縦×横を測る、版木(ベニヤ)を正確にカットします。
- トレース用紙:ベニヤに合わせます。
- 図柄の配置:作品の上部・下部・左右から位置を決めます。
- トレース用紙に図柄を描く。その後反転します。
2.トレース紙を反転し、図柄の位置を確認
・・・ポイント:作品における図柄の位置を決めます。
- 版木の上(三角形)と下(台形)の位置を決めます。
- 二つの形を安定させるため空間(作品では黒色の部分)を正確に再現します。
- マット紙を切り抜いた空間をトレース紙に重ね合わせます。
裏技:図柄の位置決める空間にはマット紙(2~3mm)を使います。
3.版木(築地塀パーツ)を合わせます
・・・ポイント:築地塀柄パーツと黒の空間とを合わせます。
裏技:従来から築地塀パーツとして保存している版木も組合わせて使用します。
工程3、彫り
1.彫りの位置を決め、黒の部分を確認します
・・・ポイント:トレース紙を反転し彫りの位置を決め、黒の部分を残す場所を確認します。
裏技(と言うほどでもありませんが):墨(黒色)を薄く溶き版木に塗ります(今回は黒を正確に彫りたいため)。
2.黒の部分を残すため外環を彫ります
3.今後の作業を考え、版木を分割します
・・・ポイント1.正確に刃先をべニアと直角に引きます。6mmべニアでもカッターナイフでカット出来ます。
ポイント2.裏表からカットするとずれが生じるので、片面から時間を掛けてカットします。
工程4、摺りの準備作業(薄い黒)
1.版木に施す、準備作業
・・・ポイント:「JOINTO」作品の特徴である、築地塀柄上の薄い黒(透明)部分の下準備をします。
裏技:摺りに入る前に上記表現部分にジェッソを塗ります(透明水彩の部分をさらに透明に表現する効果があります)。
2.黒の部分を覆い隠す、準備作業
黒の部分をマットでカバーし、粒々のマチエールづくりの準備をします。
工程5、摺りの作業(マチエールづくり)
1.先ず築地塀のマチエールづくり
ポイント:細かい粒々を黒い部分以外万遍に均等に敷き詰める。
裏技:ストッパーの裏側など粒々の素材を見つけ、試してください。
<ご参考>過去に粒々を手作りしたり、様々なコルクを使用しました。
2.マチエール状況(上部)
3.マチエール状況(下部)
・・・ポイント:上部の版木を活用し、黒の部分をマットでカバーしたマチエールづくりです。
4.イレギュラーな形のマチエールづくり
・・・裏技:イレギュラーな形のマチエールづくりには、ストッパーをカットしマット紙に貼り付け対応します。
5.黒い部分以外のマチエールづくり完成
工程6、摺りの作業(築地塀柄)
1.先ず三角部分の築地塀柄を摺ります。
・・・ポイント:築地塀柄がずれたらおしまい。周囲にマットを当てて版木を動かないようにします。
2.台形部分の築地塀柄を摺ります
・・・ポイント:前述、築地柄がずれたらおしまい。周囲にマットを当てて版木を動かないようにします。
3.築地塀柄(黒い影無しの完成)
4.築地塀柄、黒い影を入れる作業
・・・裏技:版木(ジェッソを塗り乾いた版木)部分に、ジェッソを水で溶き塗ります。
摺った後、透明水彩よりさらに透明な黒い膜ができたような表現が出来ます。
5.影の部分を刷り、築地塀柄本体は完成
工程7、最終段階
・・・裏技:築地塀柄の瓦毎に、和紙など切り抜きステンシルで着色します。
抽象木版画作品「JOINTO」の作り方、まとめ
・・・抽象木版画作品「JOINT]のに対する質問の多い事項で、黒い膜の表現方法と粒々のマチエールがあります。
当ブログでは、画面構成上の黒い膜のような表現及びマチエールの作り方など、かなり詳しく写真付きで解説しました。
版画の鑑賞及び作品作りに参考になれば幸いです。最後までご覧いただき有り難うございました。