・・・宇宙図鑑をめくりながら目を奪われたのは、見たこともない星雲の数々。2024年は作品「時空」ー24に挑戦しました。
2025年は、当ブログ作品「時空」25-1と別投稿「時空」25-2を制作しました。
2点の作品は、「第65回版画伍人展」に出展予定です。ご覧いただければ幸いです。
版画「時空」25ー1:制作工程、デザインとヒント
・・・木版画で「時空」25-1の制作工程を説明します。まず作品のヒント、次にデザインの過程から説明します。
「時空25ー1」、デザインとヒント
・・・「時空」ー24の作品の左部分を切り取り、右部分に円形の続きを入れました。
デザインの過程
基本
- 色調:作品「時空」ー24の右部を基本に、背景は暗く外輪は明るい色調にしました。
- 構図:①作品「時空」ー24の右部分に円形の続きを構想②そのまま全体を右に45度回転、③その後左下背景に球体を配置。
<ご参考>「時空」ー24の作品

ヒントと作業ポイント
- 「時空ー24」右全体を四角に切り取り、左端をカット
- 「時空ー24」右全体を四角を45度右に回転
- 下部に、円形を継続した構図を構築する
- 左側背景は濃紺、そこに浮遊する球体を出現
「時空25-1」の完成イメージ
当初イメージ(その1)
画面に動きと奥行を持たせるため、下部手前に築地塀がらと球形の浮遊物を配置する。

当初イメージ(その2)
前述イメージ(その1)に比べ、さらに画面に動きと奥行を持たせるため下部左手前にある浮遊する球形の背景を白くする。

<ご参考>
中央円形の色調に変化を持たせるためカットした和紙を敷き、摺り重ねます。[中円形内、摺り(その3)」ご参照ください)。
「時空25ー1」、制作過程
彫り
作品「時空」ー24の上部をカット
「時空」ー24の作品の左側部分(黒の矢印と築地塀矢印)をカットする。
作品上部(その1)

作品上部(その2)
作品上部の円形と同内の黒いまだら模様の彫り

作品下部、円形の継続の構成と黒のまだら模様
「時空」ー24の作品の左側部分(黒の矢印と築地塀矢印)の裏側を版木として活利用する。

作品左端の浮遊する球体と背景(その1)
左下のスペースにマットを置き、円形の傍らに浮遊する球体と背景をデザインする。

作品左端の浮遊する球体と背景(その2)
作品左端の球体と背景をマットから切り離し、背景には滑り止めのを糊で貼り合わせる。

作品左端の浮遊する球体と背景(その3)
摺り
背景カバーのマットをセット

和紙をセット、下地完成
- 作品全体の背景には、私の作品の特徴である築地塀柄を暗いトーンで配置します。
- 築地塀柄は目立たないように、暗いトーン(黒とベインズグレーのみ)で彩色します。

中央円形内、摺り(その1)

中央円形外周、摺り(その2)
中央円形外周、絵の具は、イェローグレイとネイプスイェローイタリアンを混ぜて着色します。
- 外周の色調は基本イェローグレイですが強調したい場合、ネイプスイェローイタリアンを混ぜて存在を目立たせます
- 中央円形の色調の青が混ざり、結果的に緑色を帯びても構いません
中央円形内、摺り(その3)
中央円形の色調に変化を持たせるためカットした和紙を敷き、摺り重ねます。

<摺り・版木のポイント>
- 重ね摺り:本作品で円形の重ね刷りは、マチエールと同様重要な作業です。水彩絵の具は薄く溶いて・摺りを重ねます。
- 版木の木目は横向き:円内の筋が水平に流れ画面に変化をもたらし、バックの濃紺の背景とマッチします。
築地塀影及び黒のまだら模様
黒のまだら模様と背景の球体の着色
*球体の周りの摺り、ポイント*
- 球体の同サイズの切り抜き(マット紙)を置く
- 版木に球体の周りを着色する
- 和紙の上から球体を舐め回すようにバレンを動かす
- 何回も上げ刷りをしながら着色具合(グラデーション)を確認

「時空」25ー1、の完成
濃紺の背景に球体を入れ、その背景を白にすることにより、より静寂な空間と奥行を演出ます。静と動で緊張感をとっています。

*展示会*
「第65回伍人展」(2025/6/11~6/15)、愛知県美術館ギャラリーへ出展予定です。ご高覧いただければ幸いです。

その他
過去の作品、時空ー1・時空-2・時空ー3
・・・今回「時空」25-1を制作する前に、時空―1・時空ー2(2012年)・時空ー3(2024年)、時空25-2の四点の制作しています。
時空ー1

時空ー2

「時空」-3

「時空25-2」

第65回「版画伍人展」
・・・本作品は、2025年6月11日~15日「第65回版画伍人展」に出展予定です。ご高覧頂ければ幸いです。

- 開催期間:2025/6/11~6/15
- 開催場所:愛知県美術館ギャラリー(J2室)、名古屋市東区東桜1丁目13-2。TEL052-971-5511
- アクセス:地下鉄東山線・栄。
- 開催時間: AM10:00~PM6:00(最終日はPM4:00迄)。
木版画「時空」25-1、制作工程のまとめ
・・・木版画暦20年超の経験の中で同じ題材で、10年前の題材「時空」の創作に再度挑戦し、その制作過程を掲載しました。
幼少期に宇宙図鑑で見た星雲。その後、版画を手掛けるようになってから美術館・博物館で見た曜変天目茶碗。
版画教室で学んで身に着けた信長塀の築地塀技法。この三点のコラボで実現しました。
私事恐縮ですが、昨年(2024年)版画教室へ行く途中に地下鉄で倒れ、救急搬送され即入院(大動脈解離)でした。
大勢の皆様のおかげで奇跡的に一命をとりとめましたが、これも版画の神様のご褒美と有難く受け止めています。
「版画伍人展」へ同時出展の「時空シリーズ」と共に、「時」シリーズも応援いただければ幸いです。
最後までご覧いただき有り難うございました。