アート

横山美術館:陶磁器の宝庫(眞葛焼・隅田焼・オールドノリタケ)、企画展。

 

・・・同美術館の企画展に七宝収集家が所有する七宝焼を出展したことを機に、同美術館の数々の里帰り陶磁器も観賞しました。

里帰り陶磁器の豪華でありながら繊細であるデザインと技術!その感動をあなたとシェアーできたらと思い記事にしました。

尚、七宝については「七宝の美展、麗しき明治七宝」にて、その歴史・技法など詳しく記事にしました。ご覧いただければ幸いです。

横山美術館

コンセプト

・・・横山美術館のコンセプト:明治以降世界に輸出された里帰り陶磁器・七宝焼など収蔵しています。

世界を魅了してやまない驚きべき細密さ、感嘆に言葉も出ない美「陶磁器の宝庫」が存在します。

日本人の完璧さを求める探求心精神性、仕事に対する誇り・技術のすごさを堪能しました!

展示作品を観賞した驚きを、あなたとシェアーできたらと思い記事にしました。

年間パスポート

・・・同美術館企画展七宝の美」を、再度鑑賞したのを機に年間パスポートを購入しました。

年会費その他

  • 年会費:4000円(更新3000円)。
  • 特典(1):美術館図録を1000円相当値引き提供。
  • 特典(2):招待券2枚・割引券2枚進呈。
写真:入会時特典、「美術館図録100」選をget。

 

陶磁器の宝庫(一階展示室)

・・・横山美術館長の横山博一氏が一番最初に購入した購入した、オールドノリタケのジュール金盛薔薇図花瓶。

後に、約4000点のコレクションが形作られるきっかけとなった作品です。

ジュール金盛薔薇図花瓶

・・・まず入館すると、最初にジュール金盛薔薇図花瓶が出迎えます。

写真(1F):ジュール金盛薔薇図花瓶。

ジュール金盛薔薇図花瓶の特徴

手書きの薔薇の大輪の上に、イッチンを使い泥漿(でいしょう)を点状に盛り上げます。

その後、一旦焼成した上に金とエナメルによる豪華な装飾が施されています。

金は本金といわれる純度の高い金が使用されており、制作から120年以上たった今も、その輝きは変わっていません。(キャプション説明)。

イッチンとは

泥漿や釉薬によって盛り上げの線文を表す装飾技法。時にはその道具を指すこともあります。

イッチンの名称は、友禅染などで用いる一珍(一陳)糊に由来するという説があります。

しかし糊の施し方からすると、やきものの手法との共通性は見い出しがたく、むしろ染色でいう筒引き(筒描き)の技法と同類であるため、イッチンのことをやきものの分野でも筒描きと称しています。

イッチンの道具

イッチンの道具は渋紙製の円錐形の絞り出し式のものや、竹筒に注口をつけたものがあり、近年ではスポイトが用いられています。

釉薬と泥漿では道具も異なると考えられるが、用いた道具や技法の検証が難しいため、盛り上げ線文様の装飾は釉薬の場合も泥漿もイッチンと総称しています。

 

染付游兎図屏風衝立

写真:染付游兎図屏風衝立。

・・・秋草の繁る岩陰に、2匹の兎が染付で描かれています。手前に一匹はこちらを見つめ、その背後の兎は後ろを向いて背を丸めています。

兎の柔らかな毛並みや、勢いよく葉を伸ばした草花が呉須の濃淡で表現され、生命力に満ちています。

日本画家の大出東コウは、江戸神田に生まれ、花鳥図を手掛けました。

明治3年(1870年)瀬戸を訪れ陶画師として染付磁器に着画を始めました。当時多くの陶画が制作され、海外へと輸出されました。

染付とは

・・・染付という焼き物は、白い色の胎土で成形した素地の上に、コバルト(ブルー)を主な原料とした絵具で絵付けを施し、その上に透明なガラス釉をかけ高温で焼き上げた陶磁器です。

呉須とは

・・・呉須とは酸化コバルトを主成分とした鉄・マンガンを含む鉱石のこと。陶磁器の染付に使われる呉須はこの鉱石を粉末にしたもの。

中国の呉須鉱石の産地名から、日本では“呉須”と呼ばれるようになりました。

呉須色とは

・・・呉須色(ごすいろ)とは、深く渋い青色のことです。色名の『呉須』とは陶磁器の染付そめつけに使われる顔料の名前、または焼き物の「呉須焼き」に由来します。

 

釉下彩(ゆうかさい)朝顔図花瓶

写真:釉下彩朝顔図花瓶。

・・・京都粟田口の伝統的な窯元で、七代錦光山宗兵衛は父六代について製陶に従事し明治17年(1884年)、六代の没後に七代を継ぎました。

釉下彩による淡い色合いの美しい朝顔が、前面を覆うように透彫(すかしぼり)で表現されています。

釉下彩(ゆうかさい)とは

・・・釉薬の下に絵付けを施したやきもの。鉄絵、染付、釉裏紅などがある。

透彫(すかしぼり)とは

・・・彫刻で、陶器、金属、板、石などを表から裏までとおるようにくりぬいて、模様をあらわすこと。

 

上絵金彩人物図花瓶

写真:上絵金彩人物図花瓶。

口に覆い布を被せた様子をレリーフ状に施し、鮮やかな青色と煌びやかな金彩の京薩摩です。

胴部の窓絵には、武者や光背のある僧侶などが描かれ、その間には水辺の花鳥図が配されています。

京薩摩とは

・・・貫入りのある白素地に、多彩な色絵と光り輝く金彩が美しい。細やかで華やかな絵付けの陶器です。

本家薩摩(鹿児島)で作られた本薩摩に対して、京都で作られた薩摩焼なので京薩摩。

幕末のパリ万国博覧会(1867年)明治のウィーン万国博覧会(1873年)、などで西洋の人々の目に留まった薩摩焼は、SATSUMAとよばれて大人気となった。

貫入りとは?

 ・・・陶器を水に浸したりすると、亀裂のような模様が表面に見えることがあります。
これは貫入といって、陶器が焼かれた後の冷えていく過程で、陶器本体の素地と釉薬の収縮度の違いにより釉薬がヒビのような状態になって固まる現象です。

下絵付けと上絵付

<実際の手順>
  1. 下絵:素焼き(600℃~800℃)したうつわに、呉須で絵を描きます。
  2. 本焼き:下絵処理した後、透明の釉薬をかけ、「高火度」で本焼きします。
  3. 上絵:本焼きした器に赤絵具と金彩で絵付けを施します。
  4. 焼き付け:上絵後に、素焼き程度の「低火度」で焼き付けます。

 

陶磁器の宝庫(二階展示室)

眞葛焼(まくずやき)

・・・明治3(1870)年、宮川香山(初代)は、輸出用陶磁器を制作するために横浜へ移って窯を開きました。

出身地の京都東山眞葛原にちなんで眞葛焼と命名し、輸出用陶磁器の生産を始めました。

華麗な薩摩錦手が海外に好まれる中、光山は立体的な装飾技法である高浮彫を大成させ、海外で大いに人気を博しました。

高浮彫

・・・香山独特の表現方法として確立されたのが、陶器の表面をリアルな浮彫や造形物で装飾する新しい技法でスす。

独創的な技法で、国内外の博覧会・展覧会で賞賛を浴び、眞葛焼の名を世界に知らしめました。

高浮彫鳩桜花瓶

写真:明治前期、制作。

桜の花と枝の間に身をしずめた鳥が、高浮彫で表されています。

桜の幹は花瓶をぐるりと回りこみ、荒々しい木肌と共に躍動感を生んでいます。

染付黄彩鳳凰図花瓶

写真:明治後期~大正時代前期、制作。

頚部が太く伸び、同部が広がった安定感のある形態です。

羽を広げた鳳凰が染付で描かれ、地の部分は鮮やかな黄いろを呈しています。

隅田焼

・・・愛知県瀬戸市出身の井上良齋が、嘉永年間(1849~54)に江戸へ赴き、明治8年(1875)年、隅田川沿いの浅草橋場町に、橋場窯と称する登り窯を築いたことから始まりました。

器面に造形物を張り付ける高浮彫の技法で装飾され、横浜港から海外へ輸出されました。

高浮彫鯛蟹蛯貝大花瓶

写真:明治時代前期~中期。

頚部に釉薬が掛け流され、黒い器面に高浮彫装飾が施された、隅田焼に特徴的な作風で制作されています。

底面サイン:石黒香々は本名は剛三で、香二・香香とも表示されています。

高浮彫杜若花瓶

写真:明治時代前期~中期。

杜若が花瓶全体に大きく表現されている。茎や葉の合間を縫って、明るい茶色の端が配されています。

鮮やかな紫色を帯びた杜若と白い花とつぼみで、バランスをとり躍動感も与えています。

 

陶磁器の宝庫(3階展示室)

オールドノリタケ。

・・・森村組・日本陶器合名会社(現・ノリタケカンパニーリミテッド)が明治期から戦前まで欧米に輸出した陶磁器を称します。

花瓶や置物などの装飾品と洋食器などのテーブルウェアが主体で、特に芸術的な絵付けや繊細な細工などで知られています。

ポートレートジュール金盛クイーン・ルイーズ図花瓶

写真:明治24年~44年頃

輸入金属顔料を使用して淡い青色の下地を作り、周りは金盛とエナメル盛で装飾が施されています。

盛り上げ鸚鵡図飾皿

写真:明治24年~44年頃

明治26年(1893)年のシカゴ。コロンブス万国博覧会以降、オールドノリタケの絵付けは和風から西洋風へ大きく変わっていきます。

その意味で、この作品は和風のモチーフである松と西洋風の鸚鵡を見事に融合しています。

モールド漁夫図陶板

写真:明治44年~大正10年

・・・老いた漁夫が一人で笛をふいている。背景には荒波と険しい山が表現されている。

米国ではフィシャーマンとして人気を博した。陶板他、ワインジャグ、ビアマグセット・タンカードなどが見られます。

タピストリー

写真:明治24年~44年頃。

布目仕上げと言われ、成型直後のまだ軟らかい生素地の表面に朝のような粗い布地を貼り付けて高温で焼成すると、布は燃えて布地のついた素地が出来上がります。

*最新情報は、横山美術館HPをご覧ください。

 企画展(4階)

前回展示、ノーマン・ロックウェル展

期間、(2022/8/5~11/6)

*ご参考ノーマン・ロックウェル展。ノーマン・ロックウェルと絵画、ノベルティと瀬戸の原型師

現在展示、東京・横浜焼

期間(2022/11/18~2023/2/12)

前・前回企画展、七宝の美展は2022/7/24日に終了しました

ご参考:「七宝の美展・麗しの明治七宝」を投稿しました。ご覧いただければ幸いです。

横山美術館、まとめ

「陶磁器の宝庫」と「名古屋絵付け」

・・・名古屋はかって、海外へ輸出される陶磁器生産の一大地点でした。

「名古屋絵付け」と呼ばれる華やかな作風は海外で人気を博しました。

横山美術館には、世界を魅了してやまない驚きべき細密さ、感嘆に言葉も出ない美「陶磁器の宝庫」が存在します。

日本人の完璧さを求める探求心精神性、仕事に対する誇り・技術のすごさ堪能しました

所蔵陶磁器七宝のすばらしさに感動し、充実した至福のひとときをあなたとシェアーできたらと思い記事にしました。

最後までご覧いただき有り難うございました。

<追加記事>

開館5周年記念誌、「近代陶磁器 美・技の世界」

写真:開館5周年記念誌、「近代陶磁器 美・技の世界」。

 

・・・前述したように、東海地方は古くから陶磁器の名産地でした。

その中で、名古屋は近代陶磁器生産・輸出の一大拠点でした。

その伝統を踏まえ2017年、名古屋市東区に開館した横山美術館は、

明治・大正期に海外へ輸出された日本の陶磁器を中心に収集・展示しています。

この度、開館5周年を記念し、収蔵作品集「近代陶磁器 美・技の世界」を発行しましたので紹介します。

名品約500点についてカラー写真と分かりやすい説明分を添え、

産地や素材、技法の解説も加え、初心者から愛好者まで広く楽しめる内容です。

定価4180円、A4変型判、224ページ。本誌販売店から宅配するほか書店でも販売します。

問い合わせは中日新聞社出版部=052(221)1714=(2022/10/1、中日新聞)。

やきものワールド(2022/11/17~11/23)

写真(2022/1/17):横山美術館 5周年記念特別展示ブース。

 

ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)会場で開催中の「やきものワールド」において同美術館の特別ブースが設けられています。

日本初の洋風陶磁器であるオールドノリタケや、隅田焼・有田焼・京焼・瀬戸焼・九谷焼・万古焼など、

2022/11/17、初日に行ってまいりました。同ブースも賑わい、息をのむほど緻密で大胆な作品の数々に来客も見入っていました。

横山美術館アクセス

  • 名古屋市地下鉄東山線:新栄町駅「1番出口」から北へ徒歩4分。
  • 名古屋市地下鉄桜通線:高岡駅「3番出口」から東へ、小川交差点を皆にへ徒歩4分。
  • 開館時間:AM10:00~PM5:00(入館RM4:30まで)。
  • 休 館 日:毎週月曜日(祝・休日の場合開館、翌日休館。